途中まではいい感じで内容が分かっていたのに突如として話が分からなくなったり前半部分に関する設問は解けたのに後半になると急に解けなくなったりすることがあります。
このような場合、おそらくお子さんは「時間が足りなかった」ということでしょう。しかし、実際には「時間が足りなかった」ことが原因ではないことの方が多いのです。物語文の内容が途中から突如として分からなくなる原因は主に3つあります。
物語の内容が分からなくなる3つの原因
物語はいくつかの場面からできていることはすでに書きました。そして物語の内容が分からなくなるのは場面が変わる時がほとんどです。
では、なぜ場面が変わる時に内容が分からなくなってしまうのかというと場面を構成する3要素である「いつ」、「だれが」、「どうした」が分からなくなるからです。つまり、「時間」、「登場人物」、「会話」が分からなくなってしまっているのです。
物語文の内容が途中から分からなくならないするために気をつけたほうがよい点と途中で分からなくなってしまったときに確認しなおしたほうがいい点は次の3点になります。
1.時間軸のズレに気をつける
2.同一人物の確定をする
3.会話主を正しく把握する
特に1と2に気づかず読み進めると話がまったくわからなくなってしまうので要注意です。それでは順に説明していきます。
時間軸のズレに気をつける
通常であれば物語文は現在から未来に向かって向って順序よく話が進んでいくのですが、突如として過去に戻ったり未来に話の内容が飛んでしまうことがあります。回想したりする場面は過去ですし、まだ起こっていないことを想像する場面は未来です。
これが時間軸のズレなのですが、この時間軸のズレに気がつかずに読みすすめてしまうと話の前後がおかしくなる事態が発生してしまい話の内容がサッパリ分からなくなります。そうならないために時間の変化を表現する言葉がでてきたらチェックしなくてはいけません。
例えばこんな場面。
そういえば、初めて遠足に行く前の日も緊張して眠れなかった。
「お母さん。②明日晴れると思う?」
てるてる坊主をつくりながら達也はお母さんに聞いた。
お母さんは「いい子にしてたら晴れるから早く寝なさい」と達也にいった。
そんなことを思い出しながら達也は③明日の試験に備えるため眠ろうとした。
さて、上の文章では時間軸が2度ずれています。過去を思い出す回想シーンで過去に時間軸が1度ずれ、再び現在に戻ってきています。【現在】 ⇒ 【過去】 ⇒ 【現在】 となっています。
「明日」という語が3回出てきます。このうち①と③は中学入試の日をさしていますが、②は遠足の日を示しています。
今回は簡単な文章なのですぐに気がつくと思いますが、もうちょっと複雑になってくると分からなくなってしまうお子さんが結構います。そうならないためにも時間軸がズレに気がつく必要があるのですが、時間軸のズレを見つけるヒントは主に2つありますのでこれらに気をつけて読んでください。
1.特定の日を指し示している語
⇒その日以外のことは絶対にありえない特定の表記がなされている場合がこれです。
例:初めて彼女と出会った日、祖父がなくなった日、20歳の誕生日 など
2.時間軸がズレていることを暗示する語
⇒はっきりとは表現されていませんが文末でズレを暗示している場合があります。
例:「~と思い出した」、「~覚えていた」 など⇒過去へのズレ
「~と想像した」、「思い描いた」 など⇒未来へのズレ
上記のような言葉の近くで時間軸のズレている出来事が起こっていることが多いので注意深く丹念に探してみて下さい。
同一人物の確定をする
物語文では登場人物の心の動きや行動を把握することが何よりも重要になるのですが、かならずしも登場人物は毎回同じ名前で呼ばれるとは限らないのです。人の呼び名というのは、話し手によって変わります。ある物語の主人公は自分のことを「私」といいますが、父親は「達也」と呼んだりします。また、母親からは「たっちゃん」と呼ばれるというかもしれません。
呼び方は違えども「私」、「達也」、「たっちゃん」はすべて同じ人物を指しています。このように呼びかける人の立場によって呼び方も変わってきます。簡単な文章であればいいのですが、複雑になると結構戸惑います。
例えば、こんな文章だとどうでしょう。ある学校で先生同士が会話をしているとします。
「うちのクラスの生徒はぜんぜん話を聞かない。でも先生のクラスの生徒たちは授業態度もよくうらやましいです。」
「いや、そんなことないです。私の話なんか全然聞きません。先生を先生とも思っていない。こんど先生からもうちのクラスの生徒にがつんと言ってやってください。」
「しかし、先生という職業も大変ですね。ところでなぜ先生は教師になったのですか?」
どうですか?先生のオンパレードです。(笑)うまく見分けられたでしょうか?まあここまで極端なのはないとしてもこれに近いケースのものはたまに見かけます。
いくら心情を表す表現を見つけることができても、「誰の心情なのか」が分からなくては意味がありません。かならす異なる人称や呼び名がでてきたらチェックするようにしてください。そして同じ人物を指すときには矢印や二重線でつないでおくようにするといいと思います。
意外にこの「同一人物を確定する」作業が苦手なお子さんは多いです。物語文で途中まではいい感じで読んでいたのに突如おかしくなるお子さんの場合はこの同一人物の確定がおかしくなってしまうことが多いのです。長い物語文が苦手だというお子さんをお持ちの方はぜひこの同一人物を確定するトレーニングをさせるようにしてください。
会話主を正しく把握する
「物語文の特徴と読み方」のところでも少し書きましたが、会話文は会話主(誰が話しているのか)をしっかりととらえることが大切です。日常生活でも同じですが会話はかならずしも交互に行われるわけではありません。もちろん交互に行われることもありますがどちらか一方が連続して話すこともあります。ですから登場人物が2人いる場合でも順番に話しているとは限らないわけです。
例:「君に会えてうれしいよ」と達也は言った。
このように話した人が明確に書かれていれば問題ないのですが、すべての会話文に誰の会話であるのがかならず書かれているわけではありません。特に連続して会話が出てくる時などは会話主がいちいち書かれないことの方が多いです。
会話主を取り違えると当然のことながら心情を取り違えることになりますし、また、会話に矛盾が生まれることもあり話が通じなくなってしまいます。口調や会話の内容に気をつけるとともに連続して会話が出てくる場合には少しでも会話主を迷ったら「ト書き」をつけるなどしておくと間違えにくくなります。