作問者の意図を正確に読み取る技術
私達が相手にするのは筆者ではなく問題作成者(作問者)です。受験国語では「筆者がどのようなことを書いているか」が問われているわけではありません。作問者の出題の意図に対してどれだけ正確に答えられるのかが問われています。
ですから、作問者が何を意図して問題をつくっているのか?また、どんな答えをしなくてはならないのか?ということを考えて解答する必要があります。
例えば、「傍線部1とありますが筆者はどのように考えていますか」という問いがあります。これは「筆者が強調して意見を述べている場所を読み取れるか」を作問者は試しています。言いかえれば「傍線部に関係のある強調文を探せ」といっていることと同じことなのです。
作問者はその個所から解答をつくってくる、選択肢を選ぶことを期待しています。ですから、傍線部に関係のある強調文から答えを探してくることが解答へのアプローチです。
受験国語は作問者が求めていることに答えれば正解です。極端にいえば、筆者がどう思い、どう考えているかということは一切関係がありません。
受験国語で求められているのは「建前」です。
例えば、「自然環境」をテーマにして書かれた文章があったとします。この場合、次の選択肢で正解になるものはどれだと思いますか?
問 次の選択肢のうち、筆者の考えとしてふさわいものを選び記号で答えなさい。
ア.人間が生きていく上では環境破壊が起こってもある程度はしかたのないことである
イ.どんなことがあっても環境を破壊することは許されない
ウ.人間も自然の一部なので自然と共生することを考えて生きていかなくてはならない
エ.産業の発展は素晴らしいので環境に配慮していく必要はない
本来、問題文がなければ解答はできません。受験国語の原則「問題文にか書かれていることのみが正解」と矛盾するからです。でも、答えは「ウ」以外にはありえません。
なぜなら、今の社会(少なくとも日本での)の建前は「ウ」だからです。自然環境について公の場で発言する際に「ウ」のようなことを言っておけばとりあえずは名指しで非難されることはありません。
受験国語ではそういった「大人の建前」が分かっているかどうかが重要です。というのも出題者は問題文の選択にしても出題にしても「大人の建前」を答えさせることを意図しているからです。
ですから、良いとか悪いとかは別にしてお子さんが「建前」を理解することが必要なのです。ちなみにこの考え方自体は「大人の建前」からは逸脱しています。
テーマごとにあらかじめ建前を理解しておく
受験国語で点を取るためには「大人の建前」が重要になってきます。しかし、中学受験生にはその場で大人の建前で考えることはなかなかできません。ですから、あらかじめテーマごとに建前を理解しておく必要があります。
例えば、人間関係がテーマなら「お互いの立場・考えを尊重する」ということが建前です。お子さんがそのことを分かっていなければ文章そのものが理解できません。文化がテーマなら「文化の違いを理解していいところは評価し取り入れる」になりますし、科学がテーマなら「科学はそれをどのように使うかが重要である」といったことになります。
しばしば、「幼い子は国語が苦手」とか「女の子は国語が得意」ということが言われますがおそらくこれは「大人の建前」が分かっているかどうかが関係していると思います。
文章を理解するのが苦手なお子さんはまず「建前」を知らないことが原因かもしれません。ですから「建前」というものを教える必要もあるのではないでしょうか。